赤すぐみんなの体験記


【医師監修】もしもおなかの赤ちゃんに病気が見つかったら? 荻田和秀先生(りんくう総合医療センター)に聞きました。

f:id:akasugu:20180122212248j:plain妊娠したら、赤ちゃんには元気に生まれてきて欲しいと思うのは自然なこと。それゆえに、途中で何らかの異常が見つかった場合、その事実を受容するまでには大きな困難がともなうことでしょう。

胎児の異常を指摘されたお母さんやお父さんがどのように受け止め、どのような行動を起こしたらいいのか、また、妊娠中から出産後にかけて、社会的な支援に結び付ける手立てについて、「コウノドリ」の舞台のモデルとなった、りんくう総合医療センター産婦人科の荻田和秀先生にお聞きしました。

 

胎児発育上の問題は、超音波検査で見つかるケースがほとんど

――健診で赤ちゃんに異常がありそう、というサインはどういう時に見つかるのですか?

荻田先生:ほとんどは超音波健診です。超音波診断装置で、全身の外形や臓器について、発育過程ごとにチェックすべきポイントがあって、その際に見つかる、というケースが多いです。

 

――多くの妊婦さんは、超音波検査=赤ちゃんと会える場、というような期待感を持っているので、そこが出生前診断としての性格を色濃く持っていることをあまり意識していないと思います。

荻田先生:なので、見つかった異常や気がかりについて告げると、ほぼ全員が、まず驚き、そしてたいそう心配されますね。「大丈夫なんですか」と。でも、胎児のうちに治療できる疾患は限られているし、ほとんどは経過を観察していくこととなるので、どうなるかは分からないのです。

すぐに診断が確定するような、よっぽど重篤な疾患であれば、例えばそれが心臓ならば、新生児の心臓外科のある病院を紹介したりして、その病気についてより詳しい情報などを得てもらうことはあります。

 

 

生まれてからも病気やケガになる可能性はいくらだってある

――赤ちゃんの病気を受け止め、受け入れるには、時間もかかるだろうし、葛藤もあると思います。

荻田先生:命に係わるような疾患では、より詳細な説明が求められると思いますが、医療者側から最終的にどうしろ、というのは難しいと思っています。

そしてご家族も、時間的な制約もあるなかで、どうするのかを決断するのは大変だと思います。

まず知ってもらいたいのは、100人の赤ちゃんのうち、2~3人くらいが、何らかの先天性疾患を持って生まれてくる、ということです。副耳があるとか指が一本多いとか、今すぐ命にかかわる訳ではない疾患も含めて。

だから、ご主人やご家族と、赤ちゃんに病気があったらどうするのか、というおおまかな方針について、妊娠が分かったときからどんな人も、パートナーやご家族とあらかじめ話をしておいてもらったほうがいいと思います。それが、もしそういうことが判明したときに、自分らしい決断をするための第一歩ではないでしょうか。

ただ、いつも言うのは、親に心配をかけない子どもって、まずいないですからね。おなかのなかで病気、生まれてから病気、どのような違いがあるでしょうか。無事に生まれた後でも、さまざまな病気やケガの可能性があって、その他にもいろんな問題に直面することだってあるでしょう。そして親御さんって、子どもの心配をずっとしていますよね。つまり、全ての子どもが、生まれてから大人になるまでに、誰もが必ず親に心配をさせる存在なのだ、というのは、産むと決めたときに想定していて欲しいな、って思っています。

f:id:akasugu:20180122212151j:plain
 

 

赤ちゃんが病気になったのはお母さんのせいではない

――先生が長年、産科の医師をされてきたなかで、近年、変わってきたと思われることはありますか?

荻田先生:同じ病気を持つ人のサークルが増えて、それぞれがホームページを開設されていることが多くなりました。アクセスがしやすくなって、同じ病気や悩みを持たれている人の情報が比較的手に入りやすくなった、というのはプラスの面だと思います。

ただ、同じくらい、しょうもない情報を流しているサイトなどもあって、正しくて自分に必要な情報を選択するリテラシーは必要だと思っています。

 

――そういう情報が手に入りづらかった昔のお母さんたちは、どのように向きあってきたんでしょうか

荻田先生:おそらくは自分だけでしょいこんできたんじゃないですかね。

お母さんというのは、病気になった原因は何か、突き詰めて考えてしまう。例えば妊娠初期にあんな薬飲んだからだ、とか、私が仕事をしていたからだ、とか。

私がこんなことをしたから、子どもにこんな症状が出てしまった、などと考える人はとても多いのですが、実は、そんな風に明らかな因果関係のあるケースは、あまりないんです。薬に関して言えば、飲んだからといって赤ちゃんに病気が出る薬って本当にまれだと言えます。だから、赤ちゃんが病気になった原因を、自分の生活や環境に求めるのも、非常に無意味なので、そのことはもっとたくさんの人に知ってほしいですね。

 

 

周囲にある社会的な支援にアクセスすることが第一歩

――赤ちゃんに先天性疾患があると分かって出産に臨む人にとって、大切なことは何でしょう。

荻田先生:自分の悩みや不安を、どこかで吐き出すべきだと思っています。例えば、自治体の福祉の窓口であったり、同じ疾患を持つ人のサークルだったり。ご主人とか親なども。我々医療者でもいいですよ。気持ちを吐き出す場所を、まず見つけてもらいたいと思います。

 

――「コウノドリ」のように、メディカルソーシャルワーカーの方が相談にのってくれるといいですね。

荻田先生:その通りです。しかし、メディカルソーシャルワーカーがいない周産期医療の施設もたくさんあります。出産した施設にいなければ、大学病院や周産期医療センターなどに紹介してもらうことになるでしょう。

そのようにして、赤ちゃんに病気が見つかったとき、生まれてきたけど長期のフォローアップが必要なとき、相談できる窓口はちゃんとあるので、そこで一緒になって考えてもらいましょう。

インターネットは、断片的な情報やフェイクなデータも混ざり玉石混淆です。周産期医療センターを窓口にして、地域の福祉施設などにつなげてほしいです。とにかく一人でしょい込まないようにすることが最も大切です。

 

取材・文/秋田恭子 写真/梶 敬子

f:id:akasugu:20180122212255p:plain

荻田 和秀先生

産科医。大阪府泉佐野市にある、りんくう総合医療センター産婦人科部長。「コウノドリ」のモデルでもある。産科救急やハイリスク症例の搬送も毎日のように行われる地域周産期医療センターで、母子のために昼夜診療に当たっている。