ゼクシィBaby みんなの体験記


昨年は保育施設での事故で14人が死亡。果たして保育の質は低下しているのか? by 斗比主閲子

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今月中旬、内閣府が昨年一年間の幼稚園、保育園、学童等の子どもの教育・保育施設での事故件数を公表していました。(「教育・保育施設等における事故報告集計」の公表について- 内閣府

事故の報告件数は全体で627件、認可保育園・認可外保育園等の保育施設で14人の子どもが亡くなったということです。

関連する報道では、親から「保育園が増加している中、保育の質が低下することで事故が増加するのではないか」という懸念が出ているというものが見られました。

 

私は親になってから子どもがケガをしたり、死んでしまうのを見聞きするのが苦手になりました。恐らくは、自分の子どもがそうなってしまうのを想像してしまうのと、自分が子どもを持ったことで、明確にイメージできるようになったからだと思います。「何を大袈裟な」と思われるかもしれませんが、我が家で一人ではなく複数人の子どもを持つように決めたのも、子どもの死に対する怯えがあったからです。

保育施設で14人が亡くなったという、この人数を見ると、それに引っ張られてしまうところがあります。不安な気持ちになり、信用できるものも信用できなくなってしまう……。懸念を示す親御さんがいらっしゃるのには、理解できる部分があります。

 

では、果たして、保育園と保育園を利用する児童が増えているのだから、今後事故は増加するのでしょうか。事故の報告件数は定義や収集方法が毎年大きく異なるため、過去から数字が追える保育施設での死亡件数に着目して、今後どうなるのかを考えてみました。

死亡事故の件数は増えていません

まず、死亡事故の件数自体の推移を見てみます。これについては、先ほどの内閣府の公表資料で、大きく認可保育園と認可外保育園という2つのカテゴリーに分けて集計されたものが公開されています。

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平成27年度は分類が多少異なること、平成24年から平成26年にかけては山があるものの、死亡事故の件数は、ご覧のとおりほぼ一定です。増加傾向というのはこの数字だけでは見られません

 

保育園を利用する児童数は増えています

では、保育園を利用する児童数と比べるとこの数字はどうなのでしょうか。直近5年間の認可保育園と認可外保育園における児童数と死亡人数(=死亡事故の件数)をまとめてみました。

図:認可保育園・認可外保育園における児童数と死亡人数

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※児童数は毎年4月1日時点で、平成27年度の児童数・死亡人数については幼保連携型認定こども園を含む*1

 

ご存知の方も多いと思いますが、認可でも認可外でも保育園を利用する児童の数は年々増加しています。ここ5年間でも認可と認可外合わせて約10%、20万人の利用増です。これはグラフを見ても分かる通りで、保育園を利用する児童の数は増えているのに、死亡事故の件数には増加傾向は見えません。あくまでマクロ的な話での、事故での死亡件数に限定しての話ですけどね。死亡件数からは保育の質が下がっていることを導き出せる状況ではないように思います。

 

保育園での死亡率は家庭内の子育てと比べて変わらない?

では、絶対数としてはどうなのでしょうか。平成27年では、認可と認可外の保育園における児童数は合計で260万人、死亡事故は13人という状況です。もともと保育園は家庭での保育に欠けるときに入る場所ですから、この数字と家庭内での保育における死亡事故の件数をザックリ比較してみます。

 

今の日本で0~4歳の乳幼児の人口は大体500万人で、そのうち年間約3,000人が亡くなっており、このうち不慮の事故が原因であるのは200人弱です。保育施設で不慮の事故で死亡している子どもの人数が15人ぐらいとすれば、保守的に見て約150人の子どもが、保育施設以外での不慮の事故で死亡していることになります。500万人のうち150人。

 

分母を500万人として150人の死亡というのは、先ほど紹介した260万人に対する13人の死亡と比較すると、死亡率としては後者が圧倒的に低いです。実をいえば、年度によって異なるものの、保育施設での事故による死亡件数にはSIDSや病気での死亡も含まれます。平成27年度では死因が以下のように分かれています。一方で、乳幼児の不慮の事故での死亡人数にはSIDSや病気での死亡は含まれません。公平にするために、保育園でのSIDSや病気での死亡数を除けば、さらに保育園での死亡率は低いといえます。

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正確なことを言えば、家庭での死亡率を考えるということであれば、そもそも何時間子どもの世話をしているのか、保育園を利用しているケースと利用していないケースではどう違うか等を分析する必要がありますけどね。そういったデータの存在が確認できなかったため、今回はシンプルに比較しています。

 

うつぶせ寝による窒息リスクの除去方法

保育施設での死亡件数では、睡眠中のものが大半であり、そのうち半数程度がうつぶせ寝をしていることが確認されています。

政府としては、直近3月に出したガイドラインの中で、防止策についてこのように触れていますので、最後に引用してご紹介します。(教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン

窒息リスクの除去の方法

・医学的な理由で医師からうつぶせ寝をすすめられている場合以外は、乳児の顔 が見える仰向けに寝かせることが重要。何よりも、一人にしないこと、寝かせ方に配慮を行うこと、安全な睡眠環境を整えることは、窒息や誤飲、けがなどの事故を未然に防ぐことにつながる。
・ やわらかい布団やぬいぐるみ等を使用しない。
・ ヒモ、またはヒモ状のもの(例:よだれかけのヒモ、ふとんカバーの内側のヒモ、ベッドまわりのコード等)を置かない。
・ 口の中に異物がないか確認する。
・ ミルクや食べたもの等の嘔吐物がないか確認する。
・ 子どもの数、職員の数に合わせ、定期的に子どもの呼吸・体位、睡眠状態を点検すること等により、呼吸停止等の異常が発生した場合の早期発見、重大事故の予防のための工夫をする。

※他にも窒息のリスクがあることに気づいた場合には、留意点として記録し、施設・事業所内で共有する

 

今後も保育園が増加していく中で、睡眠中の死亡件数がどれだけ減っているかというのが、一つのポイントだと思います。

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斗比主閲子
プロフィールは『1976年10月3日生まれ、福岡県出身。旧帝大卒業後、一部上場の家電メーカーに就職。外資系含めて何度か転職した後、現在は某企業のIR部門に所属。2.5世帯住宅で、X人目の子育て中……』ということになっています。

電子書籍『 ぼーっとしている人が「自分の人生と向き合う」ためのQ&A30』をAmazonで好評発売中。

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※プロフィール情報は記事掲載時点の情報です。

*1:厚生労働省 「保育所等関連状況取りまとめ(平成 27 年4月1日)」 「平成 26 年度 認可外保育施設の現況取りまとめ」より