ゼクシィBaby みんなの体験記


あらゆる交渉を試みるも、「前例はね、作ってはダメなんですよ」で終了。 派遣労働者の育休切りはこうして行われた

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長男を妊娠した当時、私は6ヶ月更新の派遣スタッフとして、同じ職場に2年勤務していた。

派遣元は一般労働者派遣事業の許可を得ているところである。

妊娠がわかってすぐ、派遣元には先に相談しないと……と思い、営業担当が来た日に話をした。

「産休・育休はちょっと、前例がないからわかりませんね」

できたての会社でもなかろうに、そんなに派遣社員の産休や育休の前例はないものだろうか。

その後、私はネットで“派遣社員でも育休が取得できること”について書かれたサイトを集め、営業経由で人事担当に連絡をした。

 

実は、妊娠を機に6ヶ月契約を3ヶ月単位に切り替え、不測の事態に備えてはどうかと、営業担当から提案されていた。

最初は「ああ、そういえばそうだな」と納得しかかっていたのだが、よく考えたら何かがおかしい。

もしかしたら、ていよく契約を切りやすくしているのではないだろうか。

周りの友人にも相談し、私は労働局の雇用均等室に電話をすることにした。

その結果、電話口でアドバイスされたのは以下のとおりだ。

・妊娠をきっかけに契約期間を短くされることはもしかしたら違法かもしれない
・派遣で1年以上勤務していても、

1)子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれる
2)子どもの2歳の誕生日の前々日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでない

この2つで引っかかって取れないことがある。

取得条件に関しては、更新回数や自動更新なのかどうかが分岐点。

また、上限が契約書に明記されていないため、実態を見て判断になるのだという。

何度か電話をかけて相談したのだが、担当によって育休が取れそうかどうかの判断が揺らいでいた。

条文に明確な判断基準が載っているわけではない以上、最終的には主観になるのだろう。

そんなふわっとしたルールで、私たちの大事な人生を決めることになっていいものなのか……。


翌月、派遣元の営業から連絡があり、社内のミーティングスペースに出向くと、見たことのないスーツを着た男性が一緒に待っていた。

名刺を渡されると、担当営業の上司であることがわかった。

「結論から申し上げますとね、育休は取れません」

席に座り、ドリンクを目の前に置かれたのち、その初対面の男性からそう告げられた。

「いろいろURLとかも送ってもらったじゃないですか。拝見したんですけども、弊社としましては、前例のないものを導入できないという判断にいたりました。」

言われっぱなしでは悔しいのもあって、私は返答する言葉をさがした。

「そうですか。育休は、ということは産休は取れるんですか?」

「そこは法律ですから。法定どおりに。」

法律を守る気があるのなら、育休だって、解釈によっては取得条件に当てはまるのである。

そこがどうしても解せなかった私はさらに詰めた。

すると、スーツの男性は一言こう言ったのだ。

「前例がありませんからね。前例はね、作ってはダメなんですよ。」


──交渉は決裂した。

妊娠による契約満了で会社都合にするので、産休明けで退職手続きを取るように言われた。

大好きな職場だったし、別の派遣会社を通じてまた戻りたかったが、そのようなことはなかなか難しく、紆余曲折を経て、現在も似たような業界で仕事をしている。

 

乳児を抱えての就職活動は非常に難しい。

また、一度キャリアが途切れると、非正規でしか社会に戻れなくなる風潮は確実にある。

その後、第二子の出産についても非正規ということで育休が取得できなかったが、今度は派遣ではなく直接雇用の非正規だったため、力わざで産休明け復帰を果たした。


現在、育児介護休業法を改正するための審議会が行われており、そこに民間団体が「非正規でも産休育休がとれる社会になるよう、育児介護休業法に改正を!」という内容の署名を提出した。

・同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
・子の1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれること、
・子の2歳の誕生日の前々日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでないこと

この3要件がなくなることで、だいぶ産み育てやすい流れになるだろう。

 

私は残念ながら「育休切り」に遭ってしまったが、これから出産適齢期を迎えるみなさんがどうかそのようなつらい目に遭わないよう願いたい。

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著者:kikka303
年齢:39歳
子どもの年齢:4歳11ヶ月・0歳7ヶ月

1976年東京生まれ、都立北園高校出身。東京モード学園に進学するもインディーズブランドブームにのって学校を中退、以降フリーランスのデザイナーとして活動。その傍ら、複数のテレビ局にてデジタルコンテンツを担当。2010年に結婚&出産。現在は都内某所にてWEBディレクター職についている。超イクメン夫、チャラい長男、食いしん坊な次男との4人暮らし。

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